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僕の慰めが『仕事に戻って欲しいから、円満にやってほしいから慰めてくれている』とわかっていても、それでも『よくやっているよ』、『それは貴女が腹立つのも無理ないよね。うん、わかるよ』、『辛いよね。そんなに我慢しなくて良いよ』、『頑張ったよ』、『貴女なしでは課長も困るよ』という言葉がなければ、立ち直れない時もあるから必要としている。
でもそれはオフィスという箱の中だけで、彼女達も本当はわかっている。『佐川は私達を心から慰めていない』と。それでも『私達が泣いている時、怒りを鎮めたい時は、彼の言葉が必要なんだ』と――きっぱり割り切れる。
だから『いい人』で終わる。そこに僕が男である意義は、彼女達にとってどこにもない。
そして僕はきっと。美佳子にとっても『いい人』に違いなかった。
彼女には入社当時から、いくつかの恋の噂があった。大学時代の彼、慰安旅行をキッカケにつきあい始めた会社の先輩、社外で出会った見知らぬ男、そして、他部署の課長。ちなみに課長は既婚者。いわゆる『不倫』。どれも噂で、どれが本当か嘘かはわかっていない。
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