1916人が本棚に入れています
本棚に追加
/281ページ
「そんなことないって。僕が休みたい時、田窪主任がいるから安心して休めるようになったじゃない。おかげさまで前は使えなかった有給休暇を使って家族旅行が出来た!」
「最大三日までね。三日経つと『佐川君、早く出勤してきて』て泣きたくなるもん。課長も落ちつきないしね」
『そうなんだ』。自分が不在の時の様子を改めて知ったりする。
「女の子達も言っているよ。佐川係長が出世しないのは、この支局が手放さないからだってさー」
「別に良いけど、それでも」
「オバサンから一言」
田窪さんの顔が、僕に向かってしかめ面になる。
「てっちゃんも、ちょっとのんびりしているかな。他の貪欲な男の子達みたいに『本部に行きたい』とか『そろそろ課長になりたい』とかないの?」
僕は黙り込む。
「ないわけじゃないけど」
「知らないかもしれないけど。てっちゃん、ローカル地区の顧客を扱わせたら右に出る者いないて言われているみたいだよ。高齢ユーザー担当、わかりやすく丁寧に親切ケアを辛抱強く出来る男ってね」
はあー、相変わらずどこでそんな情報を得てくるのか。女の情報網をがっちり握っている田窪さんに僕は数年ぶりに感心。
最初のコメントを投稿しよう!