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「主任になって本部にもミーティングとか研修とか行くじゃない。その時に、あっちの本部営業部に結城君がいたもんでね。懐かしくて話していたら彼がそういっていたから」
僕は久しぶりにドキリとした。結城という男性は美佳子と噂になったことがある『本部に出世した先輩』だったから。だけど、今となってはそれだけ。もう僕たちは結婚十年目を迎えた夫妻、ひとつになれたと確かめ合ったことがある夫妻だ。
「結城君が言っていたんだよね。本部の法人専用コンサルに佐川君みたいな男がいると、営業も動きやすいって。あっちのコンサル、ベテラン課長が定年退職した後、人材不足みたいでミスの連発なんだってさあ」
「ふうん、知らなかった」
周りを気にしない僕の呑気さに、田窪さんがため息をついた。
「そこがてっちゃんの良い所なんだけどね。本部では男もポジション争いでカリカリしているらしいよ。奥さんに八つ当たりして離婚した男もいるとかいないとか」
いろいろな話、ほんと良く知っているよねーと、僕は感嘆するばかり。
「でも私もいいや。お願い、てっちゃん。このままここにいてね!」
「なんだ、そりゃ」
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