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最後は僕を拝み倒した田窪さんに呆れ、でも二人で笑い合った。
僕がいる支局のコンサル室は今日も平和だった。お客のクレームは厳しくても……。
「美佳子ちゃんも復帰したし。夫妻二人で少しずつでも力を合わせればなんとかなるもんよ。それでいいわよ、そちらのご家庭は」
うん。それでいいです――。本当にそれでいいのかどうかはわからないが、『最低限、そうであれたらいいなあ』と僕も思っている。
―◆・◆・◆・◆・◆―
朝が慌ただしくなった。
「梨佳、早く食べて!! もうママ行くからね。パパ、戸締まりよろしくね!」
家の主婦が勤めに出ると、朝がこんなに忙しいだなんて知らなかった。
夫の僕も自分でやれることは自分で。娘も同じく。そしてパパも娘を手伝う。
「パパ、ママにこれ渡すの忘れちゃった」
「まじかよ。どれ」
「今日中に書いて出さなくちゃいけないの」
「わかった、わかった。パパが書く」
出し忘れたという申し込みプリントを見て、父親の僕が書く。
「ごめんね、パパ。遅刻、大丈夫?」
「大丈夫。パパは融通が利くの」
「係長だから?」
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