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驚いた。説得の余地もないほど、美佳子はきっぱりと返してきた。
夫として思う。彼女がそう間髪入れずに切り返してきたならもう駄目だと。
主婦になって弱くなったのか、それとも甘い主婦というレッテルを貼られる以上に嫌なことがあったのか判らない。
だが僕が惚れた美佳子はこんな女じゃなかったと信じたい。あの時、会社で悪女のように仕立てられた時だって言い訳もせず喧嘩の土俵にもあがらず、ぐっと我慢して耐えていた女性だ。その彼女が頑張れないとここまで追いつめられて泣いているのだから。
「いいよ。無理しなくても。辞めな」
僕がすんなり許した途端、美佳子はテーブルに突っ伏して泣きに泣き崩れ、わんわんと泣いた。その泣いている間、妻は僕に何度も詫びていた『駄目な妻でごめんなさい、ごめんなさい』と何度も。
あの時がフラッシュバックする。疫病神だとわんわん泣いた新婚時代の妻。
若干三ヶ月。妻の再就職は儚く散った。
―◆・◆・◆・◆・◆―
青天の霹靂だった。
「本部法人コンサルの課長候補になっているとのことだ。勿論、内示が来たら引き受けてくれるよな」
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