シーズン5【 スイートテン 】後編*男は選ばないと、酷い目に遭う*

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 沖田と寝た関係だという噂を流された――なんて、美佳子の口からは絶対に聞きたくなかったから、僕から言った。やはり彼女が涙の顔で一瞬驚き、またボロボロと涙をこぼし僕にしがみついてくる。 「黙っていても知られると思ったんだけど……」 「そんな噂、聞き流せば良かったじゃないか。前みたいに」 「そうしようと思ったの。でも、出来なかった。今度は絶対にあんな男と深い関係だったなんて少しでも思われたくなかったの! 誰が想像しても私を抱く男で思い浮かべて欲しいのは徹平君じゃなきゃ駄目なの!」  そして美佳子は、そのまま僕の足にしがみついて、ずっと声を殺してすすり泣いている。 「あの男、とっても執念深い男よ。徹平君が、私みたいに追い込まれてせっかくの室長の座を追われるなんてことになったら、私、私……」  それは僕も懸念していることだった。彼と仕事をするにはあまりにもリスクがありすぎる。僕が頑として自分の立場を守ろうと、真っ向勝負を挑んだら、きっと僕も沖田も傷だらけになることだろう。そしてそれは職場の空気を乱すことにも繋がるはずだった。
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