シーズン5【 スイートテン 】後編*男は選ばないと、酷い目に遭う*

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「佐川係長」  今日も変わらずインコールが鳴り響く中、僕は専用デスクでデータ入力。そこへ、あの落合さんがやってきた。 「なに。クレームでもあった?」 「いえ」  あれから五年。僕は変わらないが、やはり周りだけが変わっていく。それはあの魔女のようだった彼女すらも。  あんなに激しかった彼女も、今では誰よりも周囲を気遣える気の利いた女性になっていた。そんな彼女だから気づいてしまったようだ。 「なんだかここのところ、お疲れではありませんか」 「そうかな。僕はいつも通り……」  彼女が呆れたように笑う。 「係長っていつもそうですね。何事にも『僕はいつも通り』と何が起きていても、平気な顔をしてしまうんだもの」  僕のことをよく見ている女性がいるとしたら、美佳子と、お母ちゃんの田窪さんと、そしてもう一人増えてこの落合さんだ。  あの天敵ともいえた落合さんが、何故、今となっては僕のことをよく見ている女性と言えるのか。――やはり彼女も変わったからだった。
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