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ある時。既に数名いる主任職に新たに一名選出して増員することになり、課長から『徹平は誰がいいか』と聞かれた時、僕は迷わず『落合さん』と答えていた。
だが、その時は落選。過去の汚点がこんな時に響く結果に。行いとはそんな時に自分の足を引っ張る。彼女から痛手を被った僕自身からの推薦でも、だった。
だがその後『私を推薦してくれたと課長から聞きました。有り難うございました』と涙ぐむ彼女から礼をもらった。『それで許して頂けたと思っても良いでしょうか』と聞かれたので『とっくに許しているから推薦したんだけど』とも答えると、彼女はまた涙をいっぱい目に溜めて、今度は逃走するように走り去ってしまったのだ。
僕は唖然としたが、翌日からも彼女は無口で平坦なバリキャリ姉さんに戻っていて、さりげなく僕をサポートしてくれていた。
そんな片腕とも言える彼女には隠せそうになく、
「うん。ちょっと疲れている」
僕は溜め息をつきながら小さく笑った。
急に気の毒そうに僕を見た彼女が、周りを気にして耳元に囁く。
「沖田のことではありませんか」
僕はドキリとし、あからさまに驚いた顔を彼女に向けてしまった。
「やっぱりね」
今日、残業をする時に話をする時間を取って欲しいと彼女からの申し出。僕は思わず頷き約束をしてしまった。
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