シーズン5【 スイートテン 】後編*男は選ばないと、酷い目に遭う*

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 聞いて。つい先日収めたはずの拳がぎゅっと復活した! 美佳子が『あんな男と夫が一緒に仕事をする』と知って青ざめたわけも、『執念深い男だから、絶対になにかやられる』と大袈裟と思えるほどに震えて泣いて怯えていたわけもこれで、よくわかった。  沖田。お前が『疫病神』だ! なんて汚いことを平然と、うちの女房に……美佳子に!  落合さんがハッと僕を見る。僕だって今僕自身がどんな顔をしているかわからない。だが、あの落合さんの顔色がさっと血の気が引いて真っ白になった。 「いえ、す、すみません。やはり美佳子さん、そんなことご主人に言えなかったんですね。あの、その……お耳にいれるべきではないお話で……した……」 「ある、あるよ。黒子。確かに誰もが見られる場所じゃない。でも、でも、美佳子は……」  そんな女じゃないと信じてきた。いや、僅かに『本当は身体の関係もあったかも』と疑わずにはいられなかったが、僕はこの十年『あったとしても、なかった』ことを真実として彼女を信じてきたから。美佳子自身もあんなに『沖田と寝たことになっているなんて耐えられない』と泣いていたぐらいだから、きっと、きっと……きっと……。
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