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「私が寝取ったことになっていたんだもの」
なんだか混乱してきた。
「あれ、彼とは寝ていないんだよね」
「寝てないよ」
「ん? 誰が『安永さんと彼が寝た』なんて話を流したんだよ。安永さん自身は寝ていないと言うなら、男の彼から安永さんと寝たとか寝ないとか知られるようなことを、誰かに喋っていたってこと?」
彼としては美佳子以外の恋人がいることを公表したんだから、美佳子との関係は無いに等しいことにしたいはずなのに。
もし僕に恋人がいるのに他の女性とちょっとした関わりを持ってしまったとしても、口が裂けても恋人に知られないように黙っているし、会社のヤツにも同じ会社の女の子とデートをしたことなんか自慢したりしない。そんなリスクが高いこと……。そこまで考えつき、さらにその先を考えた時に僕はやっとあることに気が付きハッとする。なんだか急に見えきた!
「も、もしかして。安永さんが言っている『年下と喧嘩』って、公認の彼女のほう!?」
彼女がこっくり頷く。そしてその目に涙が見る間に溜まっていき、ボロボロと流れ始めた。
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