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まだ雪は舞うが、春を告げる祭が始まった頃。僕は答を出した。
「椿祭、今日で終わってしまうな。今夜いこうか」
帰宅するなり告げた僕に、美佳子も娘の梨佳も目を丸くしていた。
「どうしたのパパいきなり! だって今からもうご飯だよ」
その通りで、食卓は既に整っていた。
「せっかく作ってくれたのに、ごめん美佳子。それでも今夜はママと梨佳とでかけたいんだ」
美佳子がまた、僕をじっと訝しそうに見ている。やがて、彼女から笑ってくれる。
「うん、いいわよ。これはまた明日食べられるから」
「え、ママ。今から行くの?」
「うん。だってパパがどうしても行きたいって言っているのよ」
「梨佳。お参りが終わったら、お寺の近くにあるパスタ屋に行こう」
「ほんとう!? いくいく!」
娘がコートを取りに部屋へとすっ飛んでいった。
「美佳子もほら。支度して」
「うん」
いきなりの家族での外出。心なしか美佳子の笑顔が戻ったような気がした。
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