エピローグ 【 お椿さん 】*私が貴方と結婚したのはね……?*

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「ごめんね、徹平君」  俯く妻に、僕は賽銭を握らせる。 「美佳子も」  彼女が小銭を握る。僕の手から渡した賽銭を、美佳子は暫く見つめていた。 「ママ、パパ。まだ?」  先へ先へとはしゃいでばかりの娘も、とうに参拝を終え階段を下り待ちかまえている。  娘が待っているのを見て、美佳子が笑顔になり、ついにその賽銭を投げた。  二礼二拍一礼。僕の横で妻がきちんと参拝する。 「終わったわ」  厄を落とす。その意味を美佳子もわかってくれたのか。やっと僕が好きな笑顔を見せてくれた。 「もう、これで終わりな。僕たちは二度と沖田に関わらない」  今日、僕が妻をここに連れ出した意味。小雪がちらつく夜空の下、春を告げる祭で終わりにする。引いたくじの貧乏はもう受けたんだから。美佳子も疫病神なんかじゃない。貧乏くじをひいただけだ。  僕のその言葉に美佳子がまた涙をこぼした。 「パパ、いこうよ。お腹空いたよ!」 「うん、いこう」  時間は夜の八時をとうに過ぎていた。それでも参道の参拝客の賑わいは続き、人混みも終わらない。 「いこう。今まで通りの僕たちで充分だよ」
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