エピローグ 【 お椿さん 】*私が貴方と結婚したのはね……?*

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「やっぱりね。徹平君、私があれからすごくドキドキしているの知らなかったでしょう。もう徹平君のなにもかもがすっごく格好良く見えちゃって。クレームで困っている女の子を助ける為に頭にヘッドホンをつけた真顔も、どんなにあちらが荒れ狂っていても冷静にお客様と話す徹平君の声も素敵だし、淡々とデーター入力をしているワイシャツネクタイ姿の徹平君とか。大好きなマツダの車のエンジン音を聞いてご機嫌にハンドルを回す徹平君とか。……さりげなく、ワインを頼んでくれた徹平君とか。 あの時の白のグラスワイン。あれが私の中で一番キラキラしていてもらった指輪の宝石より綺麗なの。あの優しさに包まれて眠れた夜は、まるで徹平君に抱きしめてもらっているみたいで目が覚めた朝もすっごいドキドキしていた。こんなにときめく恋が三十歳過ぎて到来するなんて信じられないって毎日が幸せだった。でも、徹平君は相変わらず真面目で淡々としていて。それに私ももう……恋で浮かれて痛い目に遭いたくなかったから、抑えて抑えて徹平君の迷惑にならないようにしていたの」
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