エピローグ 【 お椿さん 】*私が貴方と結婚したのはね……?*

10/20

1914人が本棚に入れています
本棚に追加
/281ページ
「いこう。お寺の近くにあるパスタ屋さん。梨佳、ボンゴレを食べるんだー」  僕たちの『好き』は、娘にも伝わっている。  大人の店だから、たまに連れて行くと梨佳はちょっと背伸びで楽しんでいる。  パパとママが独身時代にデートをしたお店。いつもそう言う。  結婚十年目。僕たちは変わらぬ店で変わらぬ毎日の中、変わらぬ好きなメニューを頼んで、変わらぬ笑顔で過ごしていけばいい。  あんなもの、疫病神にくれてやる。    ―◆・◆・◆・◆・◆―    本部人事がどうなっているか、何を考えているか僕にはわからない。  僕が辞退した後、もう少し年配の地方支局のコルセン課長を本部コンサルに据え置いたようだった。そして沖田も念願通りにコンサルの係長として異動したとのこと。 「はあ。もうどうしてこうなっちゃったんだろうねえ」  毎度の如く、田窪さんが僕の目の前で、今日もコーヒー片手に溜め息をこぼしている。 「でも、佐川係長らしいですよね。私も是非、沖田を蹴落として課長になって欲しいと押しましたけど、今となっては私達のコンサル室に佐川さんがいるのはほんと安心ですから」
/281ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1914人が本棚に入れています
本棚に追加