エピローグ 【 お椿さん 】*私が貴方と結婚したのはね……?*

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 僕がコーヒーを飲む傍らには、あの落合さんもいた。  いつもの昼下がりの中休み。僕と休憩の時間が合うと、この女性二人は僕のところにすっ飛んでくる程、よく話す同僚になっていた。 「てっちゃんの為によく言った、落合ちゃん! でもねえ。やっぱり私達、てっちゃんがいなくなったら心細いわ」 「せっかくの適材適所の昇進だったのに。残念でしたね。佐川さん」  もう桜も散ってしまった。透かしている窓からは暖かな春の風。会社の人事異動も落ち着いた頃だった。 「しかもあの沖田が係長が行くはずだった法人コンサルに、ちゃっかり紛れ込んで。腹立つったらっ、もうっ。この会社の本部、いったい何を考えているの?」  落合さんが我が事のように怒り出し、僕と田窪さんは彼女の気性のスイッチが入る前に『まあまあまあ』と諫めた。  だがそこで田窪さんが何故か『ふふ』と笑う。 「でもさ。これって沖田君にとって最後のチャンスだと思うよ~。あの子もう背水の陣だからねえ。踏ん張れば今度こそ本物の男、でなければ……」  落合さんもそこで『ふふ』と不敵に笑う。 「踏ん張れないに賭けます、私。そういう男です、アレは!」
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