エピローグ 【 お椿さん 】*私が貴方と結婚したのはね……?*

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 美佳子が出産を終え、ひとまず落ち着いた頃。僕はまた支局で課長に呼ばれた。同じ時期、お椿さんの頃、おなじ部屋、同じ穏やかな小春日和、おなじ冠雪の山脈が見える部屋で。課長が『今度こそ、引き受けてくれるな。本部からの強い要望だ』と告げた。  たった一年。何があったのか詳しくは知らない。だけれど、僕の代わりに課長になった男性がリタイヤしそのまま退職してしまったとのこと。その前に、コンサルと営業の不手際で大きな損害を出したという報告。  そして。『沖田はもう本部には戻ってこないと思う。これで心おきなくあっちにいけるだろう』と課長。大きな損害にどのように沖田係長が関わっていたかは、僕が本部コンサル課長に就任して一年の実務実績を確認した時に知った。  ほらね。沖田がトラブった。  本部ではあちらこちらからそんな声が聞こえてきた。そして僕の支局でも。『私の賭け、勝ちましたね』とほくそ笑む落合さんがいた。  沖田は自分のために平気で人を傷つけ、目先の利益の為に簡単に信頼を軽んじる。誰もが口々にそう言っていた。そして彼の姿はもうどこにもない。
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