シーズン1 【 独身 】*僕はいわゆる『いい人』、つねに対象外*

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 しかし向こうがそんな非常識な宣戦布告をしてきたなら、美佳子がスルーするにも限界があるようだった。先に言葉を表した者勝ち、『社会の噂』にはそんな性質がある。  そして若い彼女も、若いが故に思いあまったところがあるのだろう。それを大人の美佳子が真に受けて真っ向から喧嘩するのも確かに『余計に大人げなく見える』ことになってしまうだろう。 「営業の彼、かばってくれなか……かばうはずないか」  僕は溜め息をこぼす。男って、そういうところ簡単に逃げるからなあと。きっと彼も正式恋人の暴走でこんなことになってしまい、自分にどのような被害がこれから襲ってくるか。その前にどうやって収拾すればいいかと生きた心地がしないことだろう。……そこは『ザマミロ』と僕は密かに思う。  若い彼女が先だったのか、美佳子を誘ったのが先だったのかはわからない。それでも彼は美佳子を誘っていたのは事実。そして若い彼女を後から選んだのも事実。これから男の彼も立場が悪くなっても、それも『身から出た錆』。しかも自分はまだ安全なところにいて、女同士を争わせ、知らぬ顔とは……。それも男として既にみっともない。彼も打撃を受けていることだろう。
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