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「あ、美佳子。うん、大丈夫。今から眠気覚ましにコンビニに行くところ。え、コンサル室を放置って? 落合さんがいるし……。ああ、うん、わかった。帰りにドラッグストアで買ってくる」
オムツと粉ミルクを買ってきてくれとの連絡。
『徹平君。今日のご飯、鰹のタタキとぶっかけうどん、どっちがいい?』
「うーん。鰹のタタキ!」
『わかった。冷酒も準備して待っているから気をつけて帰ってきてね』
うんと頷く受話器の向こう、元気な息子の泣き声が聞こえてきた。
じゃあねと僕たちは電話を切る。
信号が青に変わり、僕は歩き出す。
路面電車がのんびり走る大通りを横断する時、本丸が見える城山からの夏風がネクタイを揺らした。港が見える城下町、僕の生まれ故郷。やっぱり僕はずっと変わらない。
僕は今日も、いつも通り。
◆ 奥さんに、片想い/完 ◆
(続編、番外編へつづく)
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