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「午後、一件、訪問に行くけど。今日は若いの連れて行くから、落合さんは野中君と一緒にコンサル室たのむよ」
野中君というのは、元々いたコンサル員で沖田が出て行った後、係長に昇格したばかりの男性。千夏と同世代。でも既婚者。課長が留守の時は彼とコンサル室を守っている。
「いいんですか。野中さんと一緒でなくても。私一人でも留守番できますよ」
「営業本部長も一緒だから大丈夫。でも若い彼等にも厳しいところを見せておかないとな。社会勉強」
先程、『知らないでしょ!』と彼等に叫んだばかり。でも佐川課長も法人コンサル員としてそこを知るのも大事と気にしてそういう采配をとったのか。
まるで通じ合っているみたいで……。
そんなのダメと、首を振る。
絶対に誰にも言えない、知られてはいけない。悟られてもいけない。
まさか。いつの間にか佐川課長を好きになっていただなんて――。
―◆・◆・◆・◆・◆―
転属して三ヶ月が経とうとしている梅雨間近の夜。なんとか山場も乗り切れそうだと、佐川課長が口にした頃になると、夜の七時半にはだいたいのコンサル員が退出が出来るようになった。
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