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電話を切った課長には気づかれてしまう。
「笑っていただろっ」
「だって。本部コンサル室の課長が、奥さんに頼まれて仕事帰りに赤ちゃんの『おしりふき』を買いに行く姿なんて……!」
あの佐川課長がふてくされた顔で、でもメモを綺麗に折りたたんでシャツの胸ポケットにしまう。
「いいんだよ。僕はこれで」
「素敵ですよ。奥さんのお手伝いが出来る旦那さんって」
「ドラッグストアで買い物するだけだよ」
「それが出来ない男が結構いるんですって」
「かもな。若いと格好悪いと男は思うかもしれない。でも僕はもういいんだよ、ほんと、もう恥ずかしがる歳でもなし」
『そうかな』と千夏は思う。それもあるかもしれないが、出来ない男は何歳になってもできないし――と。
そう思うと、羨ましいと心底思っている。彼が奥さんも家庭も大事にしている姿。なによりも『この歳でできたせいか、余計に可愛い』と小さな息子を愛おしむ姿は会社でも評判。しかもこの本部に転属してきてから、佐川課長の女の子からの好感度は抜群だった。
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