イニング1 【 先攻◇年下男は熱闘体育会系 】

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 電話を切った課長には気づかれてしまう。 「笑っていただろっ」 「だって。本部コンサル室の課長が、奥さんに頼まれて仕事帰りに赤ちゃんの『おしりふき』を買いに行く姿なんて……!」  あの佐川課長がふてくされた顔で、でもメモを綺麗に折りたたんでシャツの胸ポケットにしまう。 「いいんだよ。僕はこれで」 「素敵ですよ。奥さんのお手伝いが出来る旦那さんって」 「ドラッグストアで買い物するだけだよ」 「それが出来ない男が結構いるんですって」 「かもな。若いと格好悪いと男は思うかもしれない。でも僕はもういいんだよ、ほんと、もう恥ずかしがる歳でもなし」 『そうかな』と千夏は思う。それもあるかもしれないが、出来ない男は何歳になってもできないし――と。  そう思うと、羨ましいと心底思っている。彼が奥さんも家庭も大事にしている姿。なによりも『この歳でできたせいか、余計に可愛い』と小さな息子を愛おしむ姿は会社でも評判。しかもこの本部に転属してきてから、佐川課長の女の子からの好感度は抜群だった。
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