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っていうか。確かに美佳子は『綺麗なお姉さん』に見えるかもしれないが、アイツめ、何を思って美佳子を言葉巧みに誘ったのやら。年上の大人のお姉さんと一度だけ寝てもいいか――とか考えていたのだろうか。自業自得。お前は明日から美佳子以上に苦しめ――。僕はいつのまにか、営業の若い小僧に激しくむかっ腹を立てていた。
泣いている女と、腸煮えくりかえっている男。そこへ空気を切り替えるかのようにして、僕のボンゴレがやってきた。
つやつやとオリーブオイルで光り輝くクリーム色のパスタに、赤と緑の彩り。そして香ばしいガーリックとアサリ貝の潮の香。ふわんとした湯気に包まれて僕の前に置かれた。
「わー。佐川君のボンゴレ、美味しそう」
彼女の前にも、ミートソースが置かれる。
「だから。この店のオススメはボンゴレだって言っただろ」
「だって。ミートソースって無難じゃない。私にはボンゴレは冒険なんだもの」
「それって。僕の言葉をまったく信用していないってことだよな」
「そういうわけじゃないけど。失敗したくなかっただけよ」
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