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どうして。恋沙汰にはいちばん疎そうな青年に見抜かれていた? 誰にも知られないよう努めてきたはずの千夏には見抜かれただけでもパニックなのに。思わぬ男に指摘されたことも、すごいショック。もう顔に出てしまった!
「俺、構いませんよ。今の主任の気持ちのままでいいから。一度だけでいいから、俺に付きあってくれませんか」
一度、ゆっくり俺と話してください。
いつもニコニコしているだけの彼の険しい横顔。彼がそのまま胸ポケットからボールペンを取り出し、千夏のデスクにあるメモ用紙に何か記した。
日時と、電鉄の駅名が記されている。
「ここで待っています。来ても来なくても」
それだけ言うと、彼が背を向けてしまう。
「い、行かないから。待っていなくて良いから」
早い内に断っておけば、彼だって無駄な労力を使わなくて済む。
だけど、次に千夏が見た彼は、やっぱりいつものにっこり笑顔に戻っていた。
「主任。野球はですね。9回裏2アウトからが勝負って言われているんですよ」
だから、待っている。俺、諦めません!! 好きな男がいても来てください!
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