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昨夜は雨だった。それでも朝には薄黒い雲の切れ間から青空。いま千夏が立っているアスファルトには水溜まり。風でゆらゆら揺れる小さな波紋に青空が映っている。
なんだかんだ悩んだ末、千夏は彼が指定した電鉄の駅に来てしまっていた。
やがて、一台のSUV車が駅前駐車場に停まった。4WDの大きめの車の運転席から、河野君が現れる。
千夏が立っている姿を見て、彼が慌てて走ってくるのも、いつもと変わらなかった。
「す、す、すみません。俺から誘っておいて!」
もの凄く焦った顔。大きな身体でどっしり見える彼が、うっかりしたと動揺している姿はちょっとおかしかった。
「時間より少し早いし。遅刻でも何でもないじゃない」
「そーですけどっ。だって……まさか……」
誘ってくれた時はとても落ち着いた男の横顔を見せてくれていたのに。まだ待ち合わせの時間でもないのに誘った女性より遅く来ただけで慌てているから、ついに千夏は微笑んでしまう。
「やっぱり『来ない』と思っていたんでしょ」
「……来ると信じていましたよ。一日中、待っている覚悟だってありましたよっ」
「あー。それでこの駅なんだ」
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