イニング2 【 後攻◇お局主任はおひとり様 】

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 その駅は千夏が電鉄で来るには数駅で、しかも大きなスーパーと隣接していた。お腹が空いても買い物が出来るということ。 「いや、そういうわけじゃ……っ」  思わぬところを見抜かれて益々焦る河野君。でも彼の良いところは、 「いえ、その通りです。だって俺、腹を空かしては無理です」  千夏も同じことを彼に返したい。彼の良いところは、格好つけないで正直なところだと思う。だから信じられる――。彼に声をかけてもらうようになってからずっと感じていることだった。  そんな男女の駆け引きも知らなさそうな自分より若い彼。だからこそ、千夏はちょっと意地悪を言いたくなる。 「なんにも食べないで一日中待っていてと言ったら、ダメなんだ」 「いやいや、決して、そういうわけでは!」  待っていてくれるの? そう言いかけ、やめた。彼の気持ちを知っていて見透かした問いかけは、他愛もない意地悪を通り越して卑しい気がしたから。そう思って飲み込んだのに……。 「もしここが無人駅で腹が空きまくっても待っていますよ。俺」
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