イニング2 【 後攻◇お局主任はおひとり様 】

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 彼の車が国道を走る。市内を抜けて東部地方へと向かっていた。 「しまなみ海道方面へ行ってみようと思っています。大橋を渡って島にも行こうと思っているんですが」 「うん、いいよ」  どこでも――。と、心の中で付け加えている。 「途中の海岸沿いの店で食事をしましょう。和食ですけどいいですか」 「いいわよ」  彼にお任せ。特に希望はない。 「嫌なことは嫌と言ってくださいね」 「はい」  何でも良かった。とにかく、自分のこと……どうやって話そうかと考えあぐねている。そればかり。  言ってしまおう。全部、全部。いつまでも『素敵な女性』なんて持ち上げられても……嬉しいけれど、自分が嫌になってくるし。彼と気まずい関係になりたくない。彼は本部の人間だし課長とも仲が良いだけに、互いの職場での関係が負担にならないよう断らないと。それってどうすればいいのだろう。 「落合さん? 大丈夫ですか」 「え、ええ」 「それならいいんですけど」  ホッとした笑顔を見せる彼。彼も彼なりに緊張しているようだった。
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