イニング2 【 後攻◇お局主任はおひとり様 】

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 やがて車窓に海が広がる。降雨のおかげで靄が拭われた空は澄んで、とてつもなく突き抜けた青。穏やかな波の海原、ゆっくりと海上を行くタンカーやフェリーも鮮やかに見える。  街中でキリキリと働いている日々を過ごしている身としては、故郷のこのような穏やかな色合いの景色を見るのはとても癒される。何か話さなくちゃ……と思うけど。暫く、ずっと黙ってこうしていたい。そう、城山の堀端でぼうっとしてるように。  そして、不思議だった。彼も黙っている。ふと運転に集中している彼を窺うと、いつもの微笑みを唇の端に柔らかに携えたまま、ずっと前を見ているだけだった。 「静かね」  話さないと気まずいのかと思って、なんとなく千夏から呟いてみる。男だからリードしてほしいなんて、若い彼に押しつけたくない。彼から誘ってくれたとはいえ、やはりあまり負担になりたくなかった。そっちからムードを作れだなんて、高飛車なオーラを醸しだして純粋そうな彼を困らせたくなかったのだが。 「でも。主任は静かにしているほうが好きなんですよね」  ドキリとした。車の中、二人きりのドライブだからなにか話さないとと思っていたのに、思わぬ彼からの返答。 「どうして」
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