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美佳子がほんとうに羨ましそうに見てばかりいるので、フォークを手にしても僕も食べるに食べられなくなる。
そして僕は決めた。伝票を置いて去っていこうとする店員を呼び止める。
「あの、グラスワインを白で。ひとつ」
『かしこまりました』と店員が去っていく。
そして僕は美佳子の前にボンゴレの皿を差し出す。彼女の不思議そうな顔。
「交換する?」
「え。いいの!」
「僕は何度も食べているし」
「本当にもらっちゃうからっ」
『いいよ、いいよ』と言いながら、僕から彼女のミートソースと交換した。
互いにひとくちずつ、やっと食べる。
「うわー。本当にこのボンゴレおいしー。佐川君、疑ってごめんなさい!」
「うん。たまに食べるとミートソースもうまいなあっ」
互いに、いつもの自分とは違う一皿に舌鼓をうつ。
暫くして、僕が頼んだグラスワインが運ばれてきた。
「こちらに」
そのグラスを彼女の前へとお願いした。また彼女が不思議な顔をしている。
「僕が飲むわけにはいかないでしょう。車を運転して帰らなくちゃいけないんだから」
「え、どうして?」
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