イニング2 【 後攻◇お局主任はおひとり様 】

9/23

1910人が本棚に入れています
本棚に追加
/281ページ
「あの、知っていますけど。なんの話をしようとしているんですか? まさか大橋を渡り継いでヒバゴンが見たいとか言わないですよね」  困惑しているけど、真顔の彼。ついに千夏は笑い出してしまった。  さらに困惑している河野君。絶対に、遊び慣れている男なんかじゃない。一瞬でもそんな男と疑った自分のこともおかしくて仕様がない。 「あはは。なんだかわからないけど。主任が思いっきり笑うところ初めて見た」 「あはは。まさかヒバゴンが出てくるとは思わなかった!」  もう、いい。今日は彼と一緒にいて楽しければいい。  そう思えたのだが。いやいや、と千夏は元に戻ろうとする。当初の目的だった『本当の自分』を知らせることだけは忘れてはいけないと、和らぎかけた心にもう一度念を押した。   ※ヒバゴン 広島県比婆郡で目撃されたとする人類猿型の未確認生物(UMA)🐵  ―◆・◆・◆・◆・◆―    海岸沿いにある和食レストランに到着。市内でも有名な企業が展開しているレストランの支店。海の側ということで、海鮮を売りにしている店だった。  店内は寿司店のようなカウンター席と、オーシャンビューの小上がりの座敷席がある。勿論、彼は海が見渡せる座敷席を選んでくれた。
/281ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1910人が本棚に入れています
本棚に追加