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そういう課長に、美味しいお店を尋ねるのは同じ会社にいる者として当たり前なのかもしれない。でも、彼は千夏が課長を好きだと言うことを見抜いている。それを分かっているはずなのに、千夏が片想いをしている男からデートの行く先を教えてもらった――ということらしい。
ちょっと腹が立ってきた。
千夏はついパタリとメニューを閉じてしまう。そして、ここで言いたいことハッキリ言ってやろうと思った。昨夜から用意していたあれこれ。私の過去に、課長への気持ちも。そして今どうしたいかも。さあ、言ってやる!
「あっ。課長に騙された!」
意を決した千夏より先に、彼が叫んだのでびっくりその口が閉じてしまった。
彼がちょっと怒った顔で、メニューをばたりとテーブルに強く置いた。千夏が怒る前に、何故か彼が怒っている?
「ど、どうしたのよ。河野君」
「課長から、『鯛飯が美味い店』だと教えてもらったから、ここに決めたんですよ!」
「そ、それがどうかしたの? 美味しそうじゃない」
メニューには美味しそうな鯛の釜飯と彩り綺麗なお膳のセットメニューが並んでいる。千夏も見ただけで食べたくなったというのに。
「どこが騙されたのよ」
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