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あの課長が騙すってなに? すると河野君が釜飯の写真を指さした。
「俺にとって、鯛飯ってやつはこういう釜で炊いたやつじゃないんです」
「あ、河野君て。もしかして南予地方の出身?」
「そうですよっ。俺の実家の鯛飯は、刺身に生卵に甘めの出汁醤油と薬味を乗っけて食べる飯のことを言うんです」
「こっちの中予地方で鯛飯と言ったら釜飯でしょ。それって『ひゅうが飯』のことじゃないの」
「俺の実家では、ひゅうが飯のことを鯛飯て言うんです。騙された。佐川課長に――。ひっさしぶりに俺の鯛飯食えると思ったのにーーー」
本気で悔しがっている彼を見て、ついに千夏はお腹を抱えテーブルに突っ伏してしまった。
「やだ。あの佐川課長に騙されたなんて、聞いたことがない! 河野君ぐらいじゃないの」
「えー、おかしいですか? 課長は俺が南予の出身だって知っているから、分かってくれていると思ったのに」
俺、結構本気で怒っていると真顔で言うので、余計におかしくなってきた。
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