1909人が本棚に入れています
本棚に追加
/281ページ
大橋に辿り着き、大きな橋をひとつだけ渡り、薔薇園があるところまで連れて行ってくれた。そこでコーヒータイム。
綺麗な薔薇の園を眺めていれば、つまんない自分の話などしたくないし語りたくない。ここでも薔薇を眺める千夏を、河野君はそっとしてくれる。
晴れた初夏の爽やかな青空に島の潮風、優しい海原と島々の景色に、島の花々。ひさしぶりに遠出をした千夏には本当によい気分転換だった。
そして、いよいよ、日も傾いてきた帰り道。
海の色が少しだけ青みを増してきた海岸線をひたすら走る車の中。もう夕方も迫ってきた色合いの空に後押しをされるように、千夏はついに助手席から運転席にいる彼に話しかける。
「有り難う。私を誘ってくれて。久しぶりに市街を出て気持ちよかった」
「いいえ。俺もゆっくり話が出来る機会をもらえて。来てくれて嬉しかったです」
その素直な笑顔にも、千夏は『有り難う』と言いたい。でも……だからこそ。昨夜、決意したとおりにケジメをつける時が来たと千夏は話し始める。
「この前も言ったけどね。私、本当に最低なのよ」
「俺もこの前言いましたよ。そんなの誰にでもあるんじゃないかって」
最初のコメントを投稿しよう!