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ひたすら話す千夏の邪魔をしないようにと思っているのか、河野君は相槌も打たない。
「でも、本当に好きなの。課長と一緒に仕事をして、彼の手伝いをしている時が一番幸せ」
「でしょうね」
いつもの笑顔で、あっさりと受け入れる彼がまた不思議でたまらない。
「どうして私が課長のことを好きだって判ったの」
「見れば判りますよ」
「絶対に誰にも知られないようにしてきたつもりなのに……」
運転席でフロントを真っ直ぐ見ている河野君が、どこか呆れたようにふっと笑った。
「俺が落合さんを好きだから判ったのかな。だって、主任。課長と一緒にいると本当に幸せそうな顔をしているから。楽しそうで嬉しそうで、コンサル室でも堀端でも見せない一番良い笑顔をしていますよ」
「嘘」
自分では気持ちをセーブするのに必死だっただけに、そんなあからさまに見抜かれるほど、幸せボケした間抜けな顔をしているだなんて思いたくなかったけど……。
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