イニング2 【 後攻◇お局主任はおひとり様 】

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「他に気が付いている人間がいるかどうかは俺にもわからないですよ。でも俺、主任を見ているうちに、判ってしまったんです。本当は『そうでなければいいな』と……。俺だって、主任がそうして『課長が好き』と正直に言ってくれたこと、悔しいんですよ。俺から見ても、課長は大人のいい男ですからね」 「私、そんな顔。した覚えない」  でも心の中では、河野君が言ったとおりだと思っているところがある。会社の中では課長の補佐に邁進する鬼ババお局様の仮面に整えても、課長と一緒に外に出てコンビニで買い物をしたり、ランチを取ったりする時は、幸せな顔をしているだろうと――。でもそんなの、休憩時間だとか外回りで外出している合間の気を抜いている顔ぐらいに思ってくれるだろうとそう高がくくっていただけなのかもしれない。  それにこの河野君。本当に千夏を真っ直ぐに見つめてくれていたんだと判ってしまう。必死にセーブしている女の気持ちを暴くだなんて、細やかに見つめていた証拠としかいいようがない。 「俺、この前言った気持ちと変わりません。課長を好きなままでいいから、俺のことも考えてもらえませんか」 「どうして私なの」
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