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それすらもひた隠しにして『大人の女だから、一人でも充分楽しめる術も分かっている』とばかりの平気な顔で、毎日を乗り切っているつもりだった。決して、『おひとり様』が平気な訳じゃない。謳歌しているわけでもない。
そうしなければ、心が折れてしまうから、そこで頑張っている。……でも、やっぱり。
「寂しくなんかないわよ。ずっと一人でここまで来たんだもの。かえって一人の方が気楽なの。佐川課長の役に立ちたいから、仕事の支障になりそうなプライベートタイムで起きる男女関係のリスクとかで日常を掻き乱されたくないしね」
「おひとり様ってわけですか」
あの河野君がどこか馬鹿にしたような呆れ顔。そんなのやめてしまえ――と叱っているようにも見えた。そこまで千夏を追いつめてでも、今の状態から連れ出したいと本気で向かってきてくれている――。
だから……、もう、これ上。本気でぶつかってくるのはやめて欲しい。その気持ちに、甘えてしまいそう。『おひとり様』なんて格好つけていても、そんなに強くはない。出来れば暖かい人肌に、千夏だって包まれたい。
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