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そこまで言われたら千夏はもう言い返すことはできない。千夏にとって課長としての彼の判断が全てなのだから。
「わかりました」
自分で諦めた途端だった。先に少しだけこぼしてしまった涙が、今度は溢れて止まらなくなった。
「落合さん……」
黙って泣きさざめく千夏を、佐川課長は哀れむように見つめている。
「大丈夫です、私。あの、課長が言うとおり少し休んで、また、また、ちゃんとやりますから」
止めどもなく溢れてくる涙を流すまま、千夏はひたすら呟いていた。
「待っているから。もう、いいよ」
最後は優しい声の『待っている』。嬉しいはずなのに。
もう堪えきれなくなり、千夏はそのまま自分のデスクに向かい、ろくに片づけもしないでバッグを取り出しコンサル室を飛び出してしまった。
『主任――』
『落合主任』
今にも追いかけてきそうな後輩達の案ずる声が背中に聞こえたが。
『そっとしておくんだ』
またそんな佐川課長の声……。
彼の何もかもが切なく胸に突き刺さる。優しさも厳しさも、全てが愛しいから余計に哀しい。千夏を思っての叱責と労り、嬉しいのに哀しい。
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