イニング3 【 九回裏◇念ずればヒットする! 】

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  よく『愛しているから、貴方のために頑張っている』という愛情を見ることもある。  でも違った。どれだけ佐川課長という存在を頼りにしていたことか。自立した大人の女? 自立した愛? 自分のことは全て自分でやっている、愛さえも、一方通行でもひとりだけの愛でも、充分満足納得している。このまま生きていける……?   とんでもない。どこも自立なんかしていなかった。  彼への頑張りをなくしたら、あっという間に崩れ落ちてしまう自分。そんなの彼への愛じゃない、独りぼっちの弱い自分を奮い立たせるための思いに過ぎなかった。それをまざまざと思い知った。 『もう大丈夫です』  帰された日の翌日だけ休ませてもらった。次に出勤した時には完全に今までの自分に戻れるようにしたいと、結局は佐川課長の言葉に甘えてしまったのだ。だが課長はそれでも構わないと許してくれた。その代わり、出勤したら今まで通りの完全たる『落合主任に戻る』ことを千夏自身固く決して。  その通り、千夏はあれから元の『落合主任』に完全復帰していた。  そろそろ梅雨が明けようかと言う頃には、千夏もいつも通りの『鬼ババ』に戻ることができ、日常を取り戻していた。
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