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僕の答は決まっている。他の誰にも悟られないように、これまた彼女の顔などみないよう、脇にある書類を整理する振りをして小さな紙にペンを走らす。
「うん、わかった。これ僕の」
「サンキュ」
メッセージをやりとりできる情報を即行で記した小さなメモを差し出す。それを彼女はさらっと軽やかに取り去り何食わぬ顔で去っていった。
それから半年後。僕たちは婚約した。
社内の誰もが驚いた。『いつの間に!』とか『わからなかった!』とか。
あるいは――。『どの男ともうまく行かなかったから、仕方なく地味な佐川君を選んで、噂で居づらくなったこの会社を寿退社するんだ』とも、囁かれていた。
僕は彼女の逃げ道ということらしい。
気にしない。僕は元々彼女が好きだったから。僕はいま大満足。
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