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「え、うそ。私、140キロ……打てちゃった」
「いえ、今のは100キロです」
はあ? なんですって――? 千夏は目を見開いて絶句した。
「なに、勝手にスピードそんだけ落としてくれちゃっていたの。それじゃあ、球が見えたはずよっ」
「俺、千夏さんにも絶対に打ってほしかったんですよ。千夏さんがスカッと打てるのはこれぐらいから落としていけばいけると思ったんですよ。でもまさか100キロをあんなに飛ばせたなんて。佐川課長だって一度もヒットしていないのにっ」
何故か、彼が興奮している。そして千夏も呆然……。確かにあれだけヒットしたらスカッとした。爽快だった。140キロなんて最初から打てるはずはない、そんなわかりきっていること。でも河野君がこっそりと千夏が打てるように速度を落としてくれたから……。
なんだか。強気で固めた女の意地を、さりげなく除けてくれたようなこの感覚なに? この前からなに、この出会ったことない感覚?
「あのですね、こうしたらもっと打てると思うんですよっ」
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