イニング3 【 九回裏◇念ずればヒットする! 】

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 持ち方、構え方、足の体重移動のタイミング、それを聞いて千夏は次の球へ向けてバットを構える。河野君がネットの外に出て行って、千夏を見守っているのがわかる。 「来ますよ」  彼の声に合わせ、バッドを振り抜く……!  『カキーン』とまた鳴った。そして空に高々とあがっていくボール。 「やった。すっごい綺麗なフォームでしたよ。千夏さん、センスありそうだ。たったこれだけでそんなに打てるなんて」  感動して喜んでいる彼の声に、千夏も微笑まずにいられない。 「また来ますよ」  また振ると見事にヒット。それから何度振ってもヒットする。  これってどういうこと? 野球なんてやったことない。でも私、打っている。こんなに高く打っている。  そしてわかっていた。これを出来たのはどうして? 意地っ張りで強気で意固地な私がこれが出来たのはどうして? 「わっ。主任がバカスカ打ってる!」  若い彼等が課長と帰ってきた。 「河野さん、あれ何キロなんです」 「100キロ」 「えー、100キロ!?」  バッターボックス、パンツスーツ姿で連続ヒットを放っている女を見て唖然としている。
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