イニング4 【 延長戦◇奇跡がおきれば決められる 】

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 シートベルトを外した課長から、先に車を降りていく。  助手席の千夏はミットを胸に深呼吸。それから車を降りる。 「お疲れ様です、佐川課長」 「お疲れ、河野君。なんか、立会人とやらを頼まれちゃってさあ。一緒に来ちゃったんだけど」  戸惑っている佐川課長は、聞き分けない長年の後輩である千夏が譲らないだろうから、まだ柔軟そうな彼に言って『僕って必要ないよな?』と同意を求めている。  だが河野君は課長が期待したものではなかった。 「俺からもお願いします」  河野君も、神妙に頭を下げお願いしてくれている。  それでも課長は『え、そうなんだ』と意外そう。  それもそうかと千夏は改めてため息。千夏の気持ちを知らない佐川課長は『なぜ、僕が立会人?』と不思議でしようがないのだろう。でも河野君は、立会人をお願いしたのは『これできっぱり佐川課長への想いも断ち切る』ことを意味し、千夏が決意していることを察してくれていた。本当に彼は千夏をよく見てくれていると痛感する。 「じゃあ、早速、始めましょうか」  彼にも戸惑いはもうないようだった。車の助手席のドアを河野君が開ける。そこから使い込まれたグローブが出てきた。 「一発勝負でしたよね。千夏さん」
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