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「だから僕は落合さんにこう言いたい」
『なんですか』と返すと、夕の風にネクタイをなびかせながら、葉桜並木を遠く遠く向こうへと辿っていく課長の目線。それを千夏も追った。
「自分で自分がずっと許せなかったみたいだから。それは落合さんらしいと僕もずっと思ってきたよ。だから、どうだろう。河野君にそこまで気持ちが傾いたなら、これからはずっと河野君に許してもらえばいいじゃないか」
自分でだめなら、選んだ男に許し続けてもらえよ。
思い続けた人からもらった最後の言葉に思えた。
課長には『彼の球が捕れたら、結婚を決意しようと思います』、だからミットを買いに行きたいのでつきあって欲しいと告げていた。だから千夏の気持ちはもう河野君にあると課長は思いこんでいる。
でも、そうじゃない。確かに河野君に気持ちが向かっている。それでもずっとずっと何年もこの男性を思ってきた気持ちはそんな簡単に消えない。その男性に……望めなかったことを、僕には出来ないことだから、選んだ男にしてもらえと言われているようだった。
胸が苦しく一瞬だけ締め付ける。だけれど、もう、一瞬だけ――。千夏は今までの切なさに小さな息をついて目をつむった。だけれど直ぐに目を開ける。
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