1915人が本棚に入れています
本棚に追加
本当に僕で良いのか。僕は会社では『いい人』だけど、プライベートは女の子とは縁遠い男独り身の生活を長くしてきた地味で平凡な男だ。それに対して、美佳子は年齢と共に華やかな大人の女性となって社交的で、いつだって『どんな男が恋人』という噂があった。
そのどの男と比べても僕など、彼女達が理想と掲げている『こんなところがイケメン』なんてところはひとつもない。あれば会社で女の子達が騒いでくれる。一度もそんなこと無かった。こうなってみなければちっとも美佳子に意識してもらえない『会社のいい人』で終わっていたはずなのに――。
だが、その後の美佳子は一人でずっと『うふ、うふふ』と笑っていた。
その顔はしっかり見た。笑っているんだから、嬉しく思ってくれているんだよな?
僕は一応、安堵する。
淡い波の青と空の水色が、記憶に残っている。
優しくて穏やかで、でもどこかぼんやり。くっきりしないけど、心の奥はくすぐったい。まるで柔らかな水彩画のようなあの日。
―◆・◆・◆・◆・◆―
最初のコメントを投稿しよう!