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今となっては。あっちは『騒ぎを起こした、会社の空気が読めない若い二人』で、こっちは『振り返らずに一歩踏み出した幸せカップル』という位置づけ。
当事者の彼や若い彼女だけじゃなく、会社中の誰もが、あれだけ美佳子一人を悪者のように仕立て上げておいて。なのに今、会社では『安永さん一人を悪く仕立てた若者カップル』ということになっている。言っておくが、僕と美佳子から『言い訳や弁明』をしたことは一度もない。この件については本当になかったが如く、或いはなにを言われても聞かれても『沈黙に伏す』と二人で決めていた。そんな僕たちの頑ななオーラが滲み出ていたのか、誰もあの件については聞いてこない。
「怖いよね。事実かどうかわからないことで『こっちが正しい、あっちが間違っている』とターゲットにして、しかも、この前まで正しいと言われていた人がコロッと悪者に転換されちゃうの」
『もう、うんざり』と美佳子がため息をつく。
ウェディングプランナーと式と披露宴について相談した帰りに、カフェで一息。カプチーノを堪能している美佳子がため息をついていた。
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