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夜遅くまで開いているこの店は、古い街並みの味わいがある寺院の町にある。僕が右折した旧道はとても古い道で狭い。なのに観光名所の寺院がある為、交通量が多い。トラックやバスとすれ違う時はぶつかるのではないかと錯覚するほど狭い道だった。郊外の割りに人口もあるが歴史ある地区なので古い民家も多く、はっきり言ってしまえば『田舎』だった。
灯りも少ない田舎の旧道沿い。なのに寺院の手前まで来ると、ログハウス作りの明るいレストラン。ほのかな飴色の灯りに包まれ、ぽうっと浮かび上がる。周囲の古い街並みに似つかないイタリアンな佇まい。夜遅くまで開いているこの店は、この時間に車で来られる大人だけが集まる静かな店だった。
「ごめん、急に泣いちゃって」
店に入って落ち着いた彼女が、それでもまだハンカチで目元を押さえた。
「いいよ、別に。いろいろあるでしょ。お互い、いい歳なんだから」
「佐川君ならそう言うと思った」
なんだか不満そうに言われたので、僕は眉をひそめた。
だからって、これ以上なにを聞けと。核心につっこめるはずもなく、僕はただ黙っていた。
「なんか言ってよ」
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