シーズン2 【 婚約 】*プロポーズ。でも僕はなにももっていないよ?*

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 どん底と絶頂を一気に体験した半年。十何年勤めてこんなことは初めてだったとよく言っている。それが『若い男の子にほだされ、遊びが前提の駆け引きとも見抜けずに真に受けてしまった』ことが発端だっただけに『自業自得すぎる私の汚点』と美佳子は再々こぼしている。  会社でも、前ほど美佳子は積極的に人と関わらなくなった。少し距離を置いて『会社の人は、所詮会社の人』とかなり拘って割り切っていたぐらい。そんな中で僕一人だけが、彼女の中で『会社の人ではなくなった』。  婚約を公表してからも、美佳子は僕との距離にだいぶ気遣っていた。『婚約者だから大目に見てもらっている』とか『私達より手伝ってもらっている』等々言われないよう、かなり神経を尖らせていた。そんな蓄積の結果なのだろう。人と一緒にいるのが苦痛になっているようだった。
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