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「ご結婚、おめでとうございます」
美佳子が退社し、無事に結婚式も終わり、新婚旅行も終えた。新しい生活を迎え、会社では誰からもそう祝福された。
美佳子と選んだ新婚旅行のお土産を配り歩けば、『美佳子さん、どう』と良く聞かれる。
「ええ。新しい生活に追われていますよ」
とだけ。僕は業務のようにして答えて回った。
「佐川君。助かったよ」
ある時。通路を歩いてコンサル室に戻るところ、営業部長に声をかけられた。なんのことかすぐに分かったので僕はただ会釈をして、『いいえ。とんでもない』と返す。
「お客様がかなりご立腹だったようで、女の子の対応じゃ埒が明かなくて、佐川君が対応してくれたんだって」
「はい。いつものことですから」
いつになく随分と手こずったクレームではあったが、全てこちら会社側のミス。お客様がお怒りになって当然のクレームだった。女の子が『担当者から連絡させます』と何度言っても引き下がってくれなかったようで、いつも通り『上の人に代われ』という強い要望で主任の僕が登場する。
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