シーズン3 【 新婚 】*疫病神がコウノトリ*

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「担当者取り次ぎ一点張り対応のところ、佐川君が直に部長の僕に報告してくれたこと、部長の僕が対応したということで、あちらもなんとか冷静になってくれてね」 「こちらこそ。本来は部長直に取り次ぐということは、通例になってはいけないのでやってはいけないことだとは思ったのですが」 「いやいや。でも判っていたんだろう。当の顧客との契約は多くはないけれど、彼があの会社の息子だってこと」 「ええ、まあ……。有名ですから。この会社でも誰もが知っていることですし。ですから対応した女の子も慎重にした結果、説得が長引いてしまいまして」 「それで結構。通例のまま僕に教えてくれなかったら、どうなっていたか判らなかったよ。親父さんの会社は僕が担当しているから」  それも見越して部長に直接繋げた――のは、確かに僕の独断だった。  まだまだ実績少ない青年実業家の坊ちゃん会社。親父さん担当の部長にいちいち繋げたのでは、これから部長が息子社長に対しても担当紛いのことをすることになりかねない。なので『担当は担当』という鉄則はなるべく守るのがベストな顧客対応であるはずだったのだ。
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