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だが僕が躊躇している間も、青年社長の怒りは尋常ではなかった。そのうえ『あの担当では駄目だ。あいつをこっちにこさせるな』という勢い。逆にここで電話を切られたらやっかいなことになる。
……元々、彼が担当だと判明する前から僕の判断は決まっていた。『誰であろうと、このクレームは営業部長に報告する』と。
僕は自分の直感で下した判断を信じて、営業部長に報告したのだった。
「有り難う。所長もそちらの課長も、佐川君の判断に異存はないから安心して良いよ」
「恐れ入ります。僕も安心しました」
上機嫌の部長にも『結婚、おめでとう』と笑顔の祝福を受けた。
その日のうちに、事は起きた。
青年社長の凄まじいクレームの大波も収まり、女の子達も和やかにいつものコンサル業務に勤しんでる静かな午後だった。
いつもの中休みに、僕は男性社員がたむろする喫煙室へ向かう。僕は煙草は吸わないが、カップコーヒーの自販機があるのでいつもここで砂糖少なめのエスプレッソを飲むのが日課だった。
「佐川さん。ちょっといいですか」
休憩室の入り口に、営業の彼がもの凄い形相でそこにいた。
「どうして俺に繋げてくれなかったんですか!」
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