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「沖田さんって、ひどい」
「美佳子さんの時だって……」
沖田というのはその若い営業の彼のこと。だが彼と美佳子の名がうっかり揃ってしまい彼女達が顔を見合わせすぐさま口を閉ざしてしまう。
おばちゃんも若い女の子にひと睨みしていたが、そこはあんまり触れたくない発言したくないスタンスを保ってきた僕の心情を気遣ってくれたのか、それ以上は何も言わなかった。
「あーあ。染みになっちゃうね。いつも綺麗にパリッとしているのに……」
おばちゃんはそう言うと、暫くの間、絶対に落ちない染みをジッと見つめて俯いていた。
「徹平君はなんにも悪くないよ。そんなことコンサルの女の子達も分かっているし、課長も営業部長も所長だって。それにこう言ってはなんだけど。彼の顧客への対応を見ると、『ノリが軽い』気がしてしようがなかったんだよね。あちらの社長さんも若いし、お互いに若いから軽いノリで丁度良いと言われればそれまでなんだけど。でも沢山の顧客の相手をしてきたコンサルの私達から見れば、いつかこうなるんじゃないかって言っていたんだよ。思っていたとおりになった。誰もがそう思っているって」
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