シーズン3 【 新婚 】*疫病神がコウノトリ*

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「有り難う。でも、このままにしておいて。騒ぎにするのは簡単だから」  それ以上はなにも言わず、苦い顔のまま黙っている僕。おばちゃんも女の子達もそっとしておこうと思ってくれたのかそのまま女の子達の休憩室へと消えていった。 「っつぅ。思いっきり殴ってくれたなあ」  正直、腸煮えくりかえっていた。  美佳子を弄んで、自分のミスを省みず人のせいにして暴力だなんて。  あんなガキのどこか良かったんだ。なあ、美佳子? もうお前がアイツのこと最低と蔑んでいてもアイツと少しでも関わっていたこと、惹かれていたことが……僕には……。  なんとか湧き上がる怒りを抑え、僕はコンサル室に戻る。  僕が戻る時には女の子達が既にヒソヒソとざわめいていた。汚れたシャツに血が滲み痣になった口元を見れば、誰だって知らぬ振りは難しいだろう。  案の定、それは僕の上司である課長の目にもとまった。 「徹平、どうしたんだ。それ」 「いえ、なんでもありません」 「そんなわけないだろう」 『こっちに来い』。課長席へと手招きをされ、致し方なく僕は向かう。
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